祝日ラプソディ4

夏というのは嫌なものだ、汗だらけのTシャツとそれにしがみつく自分の体臭がぼくを包み込んでくる。

「梅雨が明けたと思ったら、いきなりこれだよ」
「仕方ないだろ、これが夏っていうものだし、四季があるだけありがたいと思ったほうがいい」きみは言う。
「そんなものだろうか、地球は1日に一周するし、1年に太陽の周りを一周するものじゃないか」ぼくは返す。
「きみの世界はね、そうじゃない場所もたしかに存在するんだよ。ぼくの住んでるところは一年中ほどよく心地いい場所だし、ぼくには夏のこの時期しか帰ってこれないしないね」
「ほどよくか、そういうところに住んだみたいな」
「それほどいいものじゃない。なにも変わらないということは、なにも起きないことと一緒だよ。きみもあそこに行けばわかる」
「じゃあ行ってみようかな、ぼくも連れてってくれよ」
「よしてくれ、きみにはまだ早い。そう焦らず、この不快な世界をじっくり堪能しな」
「不快を堪能しろって、よくわからないよ」
「そういうものさ、失ってはじめてわかる」
彼はそう言って次の朝には消えていった。


夏のこの時期になると再び現れるお盆の亡霊だった。